Strings Of Life

かに行き詰まったときの解決方法は十人十色だと思う。
僕の場合はどうしても考え込んで出口が見えなくなってしまうので、音楽に逃避して心を休めることが多い。
まあ簡単に言うと今日はそんな日だった。そしてそんな日のための音楽を聴いた。


高校入学したてのころの話。
日曜日が苦痛なほど楽しかった中学時代に比べて、高校の雰囲気は僕がすぐに馴染めるものではなかった。
校則違反の金髪茶髪に、化粧ばっちりスカートギリギリの女の子。今まで自分の居た世界とはあまりに違いすぎた。
こんな場所じゃ何も始まらずに腐っていくんじゃないか。そんな不安が僕を取り巻いていた。


そんなときに出会ったのがこの曲。デリック・メイStrings of Life
今でも僕の人生で五本の指に入る名曲だ。
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80年代、日本車の攻勢で自動車産業が衰退した街、アメリカ・デトロイト。かつての反映は見る陰もなく、富裕層の白人達は郊外へと移り住んだ。
中心地に残されたの職を失った黒人たち。荒れ果てた市街地で、ただ絶望の空を見上げていた。
彼らが未来を志向し、この絶望的な状況を物語るために作り上げたのがデトロイトテクノという希有な音楽であった。
金のない彼らは当時は時代遅れだったRolandのドラムマシン、TR-909に代表される日本製の安価な中古電子楽器を使用して音楽を製作した。
忘れ去られていた機材の豊かな個性と機能を彼らはイマジネーションによって引き出した。それは独特のサウンドとして昇華される。
踊るためダンストラックと共に、やさしさに溢れた電子音がささやきかけるデトロイトテクノ
Strings of Lifeはそんなデトロイトテクノを代表する名曲である。


エレクトリックピアノ無限に続くような美しいストリングスからこの曲は始まる。
囁きかけるようなストリングスに、電子音が重なり、次の瞬間爆発したようにビートがうねりだす。
次々と透明な電子音が広がり始める。それはまるで歌声のように囁きかけながらも、ビートともに未来に疾走し続ける。
壮大な物語が数えるほどの音で表現されている。飽くなき未来への執念。
今がどんなどん底だろうとも、はるか彼方の明日を叫び続けている。


この曲を始めて聴いたとき、僕はとんでもなく衝撃を受けた。
夜、寝る前にヘッドフォンを着け、暗い部屋でStrings of Lifeを聴く。
頭の中に遠く、鮮やかな世界が映し出されていく。
愚痴を垂れ、腐っている自分が馬鹿らしくなる。高校がなんだというのだろう。
僕が何を言おうと明日はまたやってくる。世界は動き続ける。


高校三年の今ごろだろうか。僕は学校の廊下を歩いていてふと気づいた。
ずいぶんと知り合いがふえたなあ、と。
今の僕は高校時代が楽しかったと言える。あの高校に行っていたから、今の大学にいる。
Strings of Lifeに出会ったから、なんてわけじゃない。
ただ未来を望む、人間の切なる思いが込められた音楽に出会えたことは幸せだったと思う。
人生の糸は複雑に重なり、絡み合いながら未来へと伸びている。この曲はそう感じさせてくれる。


なんか凄い重くなったけど、この曲が本当に好きだから書きたいことが次々に出てきてしまう。
明日に備えて今日はこのへんで終わりにしよう。