麻薬書簡と行くビートニクな旅


ヒッピーなんて言葉が流行りだすさらに前の時代、1950年代のアメリカ。
それこそ最強を目指して怒濤のごとく頂点を目指す大国。
早くもこの時代に反主流、反体制なカウンターカルチャー、「ビートニク」を作り出していた若者達がいた。
言わゆるビート族である。


ビート文化を牽引していたのは思想家でもミュージシャンでもなく、小説家や詩人たち、文章を操る人々だった。
ビートニク文学の代表的人物とされるウィリアム・バロウズアレン・ギンズバーグ
伝説の麻薬と呼ばれる「ヤーへ」を巡って南米を放浪する二人。
そこで書かれた書簡をまとめたのがビートニク文学の代表的作品「麻薬書簡」である。

麻薬書簡 再現版 (河出文庫)

麻薬書簡 再現版 (河出文庫)

今までひどい訳書しかなかった(読めたもんじゃねえ)この「麻薬書簡」が今年になって河出書房から新約で登場。
「再現版」と名打たれた通り、未収録だった部分も最収録されている。
そんなにマニアックなところにこだわらずとも、まともに読めるようになったというだけで素晴らしい。


この当時の南米のドロドロとした感じが書簡という形式でダイレクトに伝わってくる。
それに加えてこの退廃を通り過ぎて新境地の開拓へと乗り出すような二人の姿勢もまたいい。
現地の少年を買って寝てみたり(この当時に両刀使いをカミングアウトするってのは結構すごいことらしい)
怪しい霊媒師のところに行ってゲロを吐きながらラリってみたり。
グチるような文体は妙に力強くさまよっている。
形式的には一応文章となってはいるが、詩的な要素も多く見られる。
どこまでが現実で、どこまでが幻覚なのか、その曖昧さがじつに楽しませてくれるのだ。


「ヤーへ」を巡る旅の終着。
結論をこじつけることもできるし、する必然性もない。
しかし、間違いなくこのあとの時代へ続いていくであろう力がある。


フラッシュバック推奨、良識ある日本国民にはぜひコイツでケータイ小説に対抗してほしい。