拝啓

なたがこんな所を見てくれているとは思いませんが書かずにはいられません。

僕は今日も学校を終え、長い帰宅の途についていました。渋谷の駅から薄暗い地下鉄に乗り込み、トンネルの壁を退屈な思いで眺めていました。
いつもと変わらない日常。傘から垂れた雨水が電車の床に汚い模様をつけています。


電車はゆっくりと三軒茶屋の駅に滑り込みました。ドアが開き、乗客がバラバラと改札に向かって歩いて行きます。
僕は車内でドアの前に立ち、出発を待っていました。
あなたの姿が僕の前に現れたのはそのときでした。あなたもまた、改札に向かってホームを移動する乗客の一人だったのでしょう。
僕はあなたを見て我が目を疑いました。なぜなら僕は見たことがなかったからです。


前転しながらホームを移動する人など。


あなたはまるでマットの上のようにホームを華麗に転がって行きましたね。体操の模範演技のような美しい連続前転でした。
なぜホームで前転をしなければいけないのか、僕にはわかりません。しかし、僕はあなたのその行動を見て、心が秋空のように晴れ渡りました。


何だって出来るんだ。やろうとしないだけだ。


あなたの演技は僕にそう語りかけてくるように思えました。


扉がしまり、電車が出発した後も、僕の感動は収まりませんでした。
僕も明日から頑張ろう。精一杯生きてやろう。そんな思いで胸がいっぱいです。
あなたのような素敵な人がこの世にいてくれたことに、僕は心から感謝します。


家に帰って母に話しても「夢でしょ」と言われました。
このブログを見ている人も、「どうせネタだろ」と思うでしょう。
僕は今日、初めてUFOを見た人の気持ちになれました。