対談 湯山玲子×梅川良満



日大藝術学部の江古田校舎でジャーナリズム論2の講義として開かれた対談を聴いてきた。
写真家の梅川良光を講師である湯山玲子が招く形で行われた。
梅川良光はSTUDIOVOICEやSWITCHなどのサブカル・アート雑誌で活躍し、
グラフィックデザイナーとのコラボレーションプロジェクトを数多くこなしてきたアーティストである。
ミュージシャンや女優から、アングラヒップホップ畑の人々までをディレクションする。
雑誌用のポートレートとアート作品を横断するような作風と言えるだろう。


対談は終始湯山玲子が質問し、梅川良満が答えるような形態となった。
梅川氏はやはり感覚系の人なので、いまいち喋りは要領を得ないなあといった感じ。
しかし、湯山氏はさすがといったところで、そんな中相当巧みに梅川氏の言葉を導きだしていた。


BEAMSでおこなわれた梅川氏の最新の写真展の紹介。
そしてSWITCH編集者時代の湯山氏と梅川氏の逸話を
クレイジーケンバンドの横山ケンの特集号をピックアップして紹介。
かなりギラついた、しかしどこか日常の延長線上にあるような、一種背伸び感を感じられる印象的な画。
宇川直宏アートディレクションを思い出させる。実際二人はコラボもしているし、プライベートでも仲が良さそう。
また、このように雑誌の仕事という極めてシビアな現場を経験していることが、
梅川氏の写真のインパクトと同時にある普遍性の源でもあるように思えた。



梅川氏は写真展で使う写真を選ぶときに重視するのが構図のようで、
梅川氏の写真で一番トガっていると思われる構図の秀逸さを自身でもよく分かっているようだ。
また、梅川氏曰く写真を選ぶ行為はDJをするときにレコードを選ぶ感覚と似ているという。
自身でDJ活動を行う梅川氏らしい意見だが、これを湯山氏は印象的にまとめた。
湯山氏によるとDJというのはつまるところ編集行為であり、
強力な編集能力を有することが重要になってきているという現代のアートシーンで生き残る強さでもある。
梅川氏はグラフィックデザイナーと沢山のコラボレートプロジェクトを行ってきているが、
それでもなお「梅川良満の写真」であるのは彼の持つ編集能力の高さがカギとなっているという。


現在のアートシーン、つまりは商業主義と密接に結びついたシーンを読み解くには
コラボレーションの向こう側にあるアーティストの編集手法を汲み取ることが重要になる。
梅川良満の写真の強烈なインパクトは、彼の確かな編集(広い意味での)経験に裏打ちされたもののようだ。