風だよね、きっと

棚を整理していたらこんなのが出てきた。
セブン&アイの総合通販サイト|オムニ7

もちろん読んでみる。
感想。藤子先生やっぱり天才。この「のび太の魔界大冒険」ドラえもんの大長編の中でもかなりの傑作にランクインするんじゃないだろうか。
ドラミちゃんが前触れもなく助けに来ちゃう嫌いはあるけれどもそれを指し引いてもハイクオリティ。
冒頭で「ただのお芝居の衣装」と言ってドラえもんが頭にかぶる「魔法ぼうし」があとあとになって生きてくる伏線や、
一度「おわり」とテロップを出しておきながらも終わらせない演出など、素晴らしい出来だ。
作中に出来杉が魔法と科学の歴史について説明するシーンがあるのだが、その内容のリアルさは僕を一気に物語に引き込んだ。
とにかく単純な子供向け漫画ではないので全ての人に読んでほしい。


さらに驚くべきはこの複雑なストーリーが200ページ足らずの単行本に収められていること。
藤子・F・不二雄の物語構成力は半端ない。
最終目標の魔王を倒したあとのエピローグはたったの2ページ。しかし急に終わる不自然さはまったくない。
なぜなら最後にのび太の言う「風だよね、きっと」というたった一言のセリフが現実の世界に戻ってきたことを全て説明し、物語を奇麗に終わらせているからだ。
うーん。まさに鬼のような才能。僕にはこんなプロット一生かかっても作れないだろう。
藤子・F・不二雄の世間の評価はいつも「子供に夢を与えた」だの「みんなの人気者を作った」だのといった着想への評価にとどまる。
しかし、藤子の真の力というのはそのプロット構成力にあるはずだ。1ページ1コマ、全て無駄がない。


他にも「プラモで戦争」という少年たちの夢を具現化したような「のび太の宇宙小戦争」や、「聖域を作ったのはドラえもんだったのか!」が最高にしびれる「のび太と竜の騎士」などとにかく名作ばかりの大長編シリーズ。昔はかなり持っていたはずなのだけど、どうも見当たらない。


これはもう集めるしかないな。